第30話
前から抱きついてくる穂乃花。あざとい。あざとすぎるぞ穂乃花。でもありがとう!
とりあえず頭を撫でながら抱きしめ返す。柔らかい穂乃花はそれだけで嬉しそうに笑う。
「えーと、ということは相田との噂はガセで、本当は久住と飯倉がお付き合いをしている、と?」
「松木くん正解。」
「へへ、あざーす!」
伺うような松木に穂乃花が答えると、顔をデレデレに緩ませる松木が気持ち悪く答礼を言う。そして一拍。
「「ええーーー!」」
秋田と松木が限界レベルの大声を挙げた。
「まっ、あっ、くずっ、へっ。」
「…まさか。まさかまさかまさか。」
言葉にならない松木と、低い声でブツブツ言っている秋田。突きつけられた現実に、理解が追いついていないらしい。それを見ながら、ニヨニヨと笑みがこみ上げてくる。今僕がこの場で頭を撫でているこの超絶可愛い生き物は、僕の彼女なわけだ。
すまない松木。お前の加奈子なんか相手にもならない。
この可愛い子が僕の彼女でーす!と叫びたいのを必死でこらえる。気持ち悪くてもしょうがない。だって僕の彼女は飯倉穂乃花だ。少しくらいハメを外してしまうのも多めに見てほしいくらいの幸運だ。
そんな僕の心情が分かったのか、秋田も松木も目を見開くと、がっくりとうなだれ、地面に膝をついた。
拳を地に打ち付ける松木と、両手で顔を覆い天を仰ぐスタイルの秋田。おもしろすぎるリアクションを前に、こうだから僕はこいつらと友達になったんだよなと思う。
「なんてことだ。こいつのこんな裏切りを許すとは!」
「マジでないわ。いや!俺の加奈子の方が、か、か、かわっ。…可愛いしっ!」
僕を睨む秋田と、動揺の隠せない松木を前に思わず吹き出した。
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