第28話

「あ。この年、謎の交流会ってのがあって近くの女子校が来てる。」


「はぁ?なんそれ。俺も参加したい!」


「無理だろ。入学してそんなイベントあるのなんて聞いたことないし。」


「はぁ?ならこの年の在校生がなんらかのやらかししたとかで廃止になったんじゃね?よし。俺の兄ちゃん〆るわ。」


「大学の時ボクシングサークルに入ったあのいかつい兄ちゃん?よし〆ろ。頑張れ。」


「…やっぱやめるわ。無理。」



秋田と松木の軽快なやりとりを聞きながら、ムカムカするこの感情をどうしようもできずに戸惑う。嫉妬、なんだろうな。それとも穂乃花に対する怒り?


自分が馬鹿なのか、まだ騙されてないとは思っている。だけど校門前で待ち合わせしてたのを見ると、噂も本当なんじゃないかって思う自分もいる。



彼女との”現実”を確かめようにも、スマホはスン…と静かにカバンの中で眠っている。先延ばしにしていたモバイルバッテリーを早急に買いに行こうと決意した。


なんか、イライラするし、モヤモヤする。とりあえずワック行ったらバウと近くの公園で思いっきり走り回って憂さ晴らしをしようと思ったその時だった。



「あの!知世ちせくん!」


「っっ。」



大きな声で呼ばれたかと思えば、背中のリュックが誰かに引かれて体が後ろに持っていかれる。


顔だけ振り返れば、穂乃花が息を切らして僕を見上げている。その顔は強ばっていて、大きな目には涙が薄い膜を張っていて今にもこぼれ落ちそうだ。



「知世くん。あの、あのね。」


何かを言いたそうな穂乃花は何度もあのねを繰り返しているが、言いたい言葉が見つからないのかどんどん視線を下げていく。


涙はこぼれてはいない。だけど穂乃花が泣いている、そんな気がした。



だから。


「…穂乃花。相田と付き合ってるって、本当か?」



そう聞けば、穂乃花は絶対に頷いたりしない。そう思って質問した。

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