第27話
それを知っているからか、僕の松木への態度を見て同情したのか、秋田が慰めるように肩をポンポンと叩いた。
2人のやりとりを見ていて、なんとなく笑えてくる。結局僕は、こいつらとこうやって馬鹿騒ぎしているのが性に合ってるかもしれないな。
夜ふかしして鈍くなった思考ではもう今日はこれ以上考えたくなくて、秋田と松木と連れ立って校門をくぐる。
その時だった。
「あ…。」
小さな声だったけど、なぜか聞こえたその声は、最近話すようになって聞き慣れてきたもの。不意に見れば校門の柱の外側に1人立っていた飯倉穂乃花が僕を見て何かを言いたそうにこちらを見ていた。
その直後。
「お待たせ!」
相田直斗が息を切らせて彼女に話しかける。それに一瞬肩を揺らした彼女が相田を見上げたのを見て、僕は彼女から視線を外して歩き出した。
「見ろよ一緒に帰んのかな?あいつ部活どうすんだよ。サボり?そりゃ彼女と部活なら彼女だよなー。」
「クソッ!」
松木の浮ついた声に秋田が激しめの悪態をつく。どうやら選ばれし者、相田直斗に嫉妬しているらしい。
「堂々とサボりやがって。サッカー部の顧問って誰だっけ?通報しようぜ!」
「それいいな。学校に電話すりゃいいのか?」
なぞの盛り上がりを見せる2人のやりとりを聞きながら僕はただ早足で進む。
「待てって久住!電話するとこなんだから。」
「とりあえず検索したわ。うちの学校のホームページ、2010年から更新してないんだけど!この電話通じんの?やる気ねー。」
今度は学校のホームページで盛り上がりだした2人。通報する気のない様子から視線を外して、無言で進んだ。
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