第25話

「はぁ。」



僕の不幸は終わらない。まさかのクリームパンを食す機会すら奪われるとは。穂乃花の噂、充電はない。そしてクリームパン。僕は、世界一不幸な…。



「ほい。」


「え。」



目の前に出されたのは、ぼってりとしたお腹を主張してくるクリームパン。おおう…。とりあえず受け取れば、腕が軋んだかと思うほどの重さを感じる。そしてそのクリームパン越しに見えるのは松木の笑顔。うわ、うざい。



「ほしいと思って買っておいたぞっ。」


「可愛くねー。」



そういうのは穂乃花に言ってほしいやつだ。体をクネクネさせて僕へ意味有りげに視線を寄越す松木にとりあえず、投げキッスを送っておく。



「うわっ。キモッ。」


「いや、さっきのお前もな。とりあえず110円。おつりはお駄賃にしなさい。」


「ありがとママー。」


「さっきからやりとりがキモすぎない?」



漸く隣で大人しくパンを頬張っていた秋田が3個目の袋を開けながら白目で言う。いや、お前ペース早すぎ。



根暗インテリ系秋田は実は意外と食べる。僕が普通の男並みだとしたら秋田はその3倍は食べる。もしかしてこいつはラグビー部とかなんかもしれない。ちなみに松木は女子より食わないという超少食。このクリームパンなんて1個も食べれないくらいだ。




「いや、松木の優しさが滲みてる。」


「どしたん傷心なん?」


「いや、そういうわけじゃないんやけどな。」



言いかけて、ふと視線を廊下に流せば…。穂乃花と相田が2人で、廊下を歩いているのが見えた。

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