第24話

それからはずっと相田と穂乃花の話でもちきりだった。教室の前を相田が歩いて行けばみんなが見る。穂乃花は通りかからなかったけど、相田はみんなにちょっかいをかけられて恥ずかしそうに歩いているのを見た。



相田の感じから見てどう見ても嘘をついているようには思えない。だけど、シャットダウンしてるけど僕のスマホには彼女の彼氏が自分だという証拠が詰まっているわけで。



混乱する頭を整理しきれなくて結局、午前中の授業は頭に入らなかった。



昼休み。秋田と松木が購買に行っている間、弁当を開きながら考える。会いに行くべきか?でも、堂々と会いに行くのもなんか照れくさいし、穂乃花の彼氏ってだけでこんだけ騒がれるんなら正直、周りに吹聴して歩くのは気が進まない。



僕の人生の運を全て使ってまで付き合っている彼女だ。勿論自分に余裕があるわけがなくて。正直、静かにゆっくりと関係を進めて行きたいと思っている。



それなのに、朝一でこの騒ぎ。そのせいでまさかのダチである秋田と松木にも本当のことを言えていない始末だ。



「お前ー。電話したんだけど!」


「っっ、なに?」



考えに耽っていたら突然、背後から声がしてびっくりした。振り向けば松木が眉間に皺を寄せてこっちを見ている。



「充電切れてて無理。」


「早く言えよー。今日の購買穴場で幻のクリームパン、売れ残ってたのに。」


「うっそ。で?」


「でって?」


「買ってきてくれたんだろ?」


「そりゃ電話繋がらないんだから買ってきてないわ。」


「はぁ?」



購買の幻のクリームパンが…。有名なパン屋が卸してるやつで、クリームがずっしり入って108円っていう超お得パンだ。毎日20個限定。勿論、競争率が高すぎて幻と名前が付いている。

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