第21話
「もう、聞いたのか?」
「なんだもう誰かに聞いたのか?まぁ学校中で噂になってるからなー。」
眉間に皺を寄せた松木が何度も頷く。なんだ?なんか、様子が。
「そりゃあの相田と飯倉のビックカップル誕生とか、どこの漫画かって話だよなー。」
「へぁ?」
面白くなさそうな松木の言葉に、変な声が出た。今、なんてった?
「なに?知ってたんじゃないのか?相田と飯倉のこと。」
「…飯倉って、あの飯倉だよな?」
僕の質問に、松木が首を傾げた。
「他に飯倉って名前いないだろ。あ、古典のジジイが飯倉だわ。」
「それな。」
松木の言葉に秋田がのんきに頷いている。いや、それどころじゃないんだが。相田ってあの相田だよな?サッカー部のエースの。飯倉が古典の飯倉じゃなく飯倉穂乃花だとしたら。
「なんか昨日のサッカー部の部活で本人が言ってたらしい。相田からの告白で付き合うことになったって。なんか収まるとこに収まった感じで誰も悔しがってないけどなー。」
どうやら、僕の彼女は空想の飯倉穂乃花だったらしい?
頭の中にはハテナばかりが浮かぶ。昨日の会話が本当に夢だったのでは?と自分を疑ってみるも、スマホを見れば昨日夜寝るまで彼女とやりとりしたメッセージが確かにあった。
[呼び名はなんにする?]
[なんでもいいよ。]
クソ。僕ってなんでこんなそっけない文しか返せないんだ!
[なら、名前がいいな。]
可愛いワンコの絵文字を見て頬が緩む。その途端。
【シャットダウンします。】
充電が無くなって僕のスマホは無事死亡した。
もはや白目で固まるしかない。有頂天だったのにどん底に落とされた気分だ。
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