思い込み

第20話

正直、浮かれていた。それもそうだろう。僕はこれまでの人生においてモテたことがない。ということは当たり前に彼女なんていなかったわけで。



別に彼女が欲しくないとか性欲がないとかじゃ決してない。



成績は悪い方ではないとは思うけど、顔も普通、飛び抜けて良い長所があるわけじゃない僕と付き合いたいと思う子なんていないのは当たり前だ。



最近彼女をゲットした浮かれ松木は”少々”社交性があるから分かるけど、僕と秋田は小学校の頃から女子とただの会話すらろくにできないいわゆる残念男子の部類に入る。



そんな僕が?まさか。これは夢だ。そう思うけど現実は、人生の運を全て使ってしまったのでは?と思うほどの快挙を成し遂げた。



飯倉穂乃花が僕の彼女に。




「やったーー!」



とりあえず帰り道でめいいっぱい叫んだのは、ご近所さん、許してほしい。



…後日二件隣のおばさんにチクリと嫌味を言われたけど。




だけどその日のバウの散歩はあいつがどれだけ吠えようがどうでも良くなった。ニヤニヤによによ…キモい笑顔の飼い主と狂ったように吠える犬。周りの人から見れば恐怖でしかなかっただろう。だけど許せ。僕は今、幸せなんだ。




これは、自慢していい、よな?あの飯倉穂乃花が僕の彼女だぞ?確実に松木の彼女の加奈子ちゃんよりは可愛い。すまない加奈子ちゃん。



相変わらずまったく女の気配がなくPCばっかいじってる秋田には少々悪いが、僕はとにかく、声を大にして自慢したい。



飯倉穂乃花は、僕の彼女だ!




意気揚々と翌日学校に行く。やはり意識の違いだろうか。空が青い。空気がうまい。朝吠えてたバウにも笑顔を返した。



母さんの毎日一緒の朝ごはんもごちそうに感じる。そして、スマホの充電するのを忘れて今15%だ!



なにもかもが嬉しく感じる。秋田と松木、待ってろよ。僕は、やりました。



「おはー。」


「あ、久住!聞いたか?」



なんとなく浮かれてるのはダサいと思って普通を装って近づけば、松木がズイッと至近距離で視線を合わせてきた。



…もしや、もう僕と彼女の噂が?

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