第18話

「これは確実に気がある感じだ!それもお前に。お前に!?」


「いや、自分で言ってて驚くなよ。」



めちゃくちゃ驚いてる失礼な松木に、マジでムカついた。でも、そうだよな。そんなことあるわけないわ。



「まぁまぁ。あの子、本当に良い子なんだからさ。顔見知りの同じ学校のだんしいー。みたいな感じで話しかけてくるだけ説が濃厚だって。なんたって話しかけられているのはこの僕とバウやから。」


「バウってなに。」


「僕ん家の犬。よく吠える。」


「知ってる。」


「なら聞くなクソ野郎が。」



冷静に返してくる松木と静かに頷く秋田に本気で殺気を覚えていたのは、つい数日前のことだ。






「……。」



そして現在。僕は大変困惑している。



なぜかというと、さっきまでは笑顔だったのに、あまりにも僕がなにも話さないから困惑顔になってきている、飯倉穂乃花が目の前にいるせい。僕の様子を伺うように目をうるうるさせている(願望)。僕はどうやら今、この天使に告白されたらしい。自分も好きだと返事をしたくせに、どちらかといえば戸惑いの方が大きいのが本音だからだ。



「ええと、ちょっと、お伺いいたしますが。」


「はい!ななんでも聞いてください!」



なぜか敬語の僕につられて敬語の彼女。しかもちょっと噛んでるのが可愛い。



「なぜ、僕を、そのー。」


「…好きか、と?」


「…ああ、はい。」



なにこの可愛い生き物。自分で【好き】ってワードを言っておいて顔が真っ赤なんですけど。まぁそういう僕も顔が熱いんですけどもね。



とりあえず固まってしまった彼女を前にその辺を見渡してみる。校舎の中に人影はない。学校でも結構端っこにいるおかげか、放課後の今、目撃者はまずいなさそうだ。対峙している僕と飯倉穂乃花を見たら、100人が100人僕が彼女に告白していると勘違いされるだろう。



もちろん結果は撃沈だろ?と鼻で笑われる謎の恥はかかなくて済みそうだ。

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