第17話

「ニヤついてるのはほんとだよな。」


「だな。」



秋田の問いかけに松木がニヤリと笑う。デコが異常に赤いくせしてムカつくな。


「それで?」


「吐けよ。なにがあった?」



秋田の聖母のような笑顔と松木の悪魔のような笑みを前に、僕はもう黙っているわけにはいかなかった。



「マジで?」


「…まぁ。」



目を見開いてパクパク口を動かしているだけの秋田と信じられないとばかりに僕の肩に手を置く松木の問いかけに素直に頷いた。



「でもまぁ、別にいい感じとかじゃないし、恋が芽生えそうとかそんなんもないし。たまたまいるからちょっと話す、くらい。え、どうした?」



なぜか言い訳みたいに飯倉穂乃花といい感じになったわけじゃないと否定していると、秋田・松木両名になぜか親の敵のように睨まれている。



豹変した2人に戸惑っていると、先に視線を外した松木が深ーいため息を吐いた。



「俺らみたいな底辺の奴らはそのおしゃべりの機会すらないのをこいつはよく分かっていらっしゃらない。知ってた?飯倉穂乃花ってSSレアなの。その上と言ってもいいくらいよ。そんな子がお前の犬が異常に吠えるだけで話しかけてくる?そんなわけあるめえ!相田とか確かゴールデンレトリバー飼ってるぞ!この間子供が生まれたとも言ってた!でも彼女は完全スルーだったのを俺は知ってる!」


「相田のいらない情報をありがとよ。」


「どういたしまして!」



どうやら相田は飼っている犬まで完璧らしい。うちの売れ残り吠えまくり犬バウじゃゴールデンレトリバーの足元にも及ばないんじゃなかろうか。

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