第16話

「ぼーっとしてはにやにやして。俺はそれがものすごく気に入らねぇ。」



まるでどっかのマンガのキャラのセリフみたいな言い方の松木にわざとらしく迷惑そうな顔を向ける。



「ニヤついてんのはお前だろ?」


「は?」


分かる。その「は?」は威嚇の意味だよな?オラオラ、この俺にそんなこと言っちゃっていいの?は?の意味のは?だろ?だけど残念。お前の今のは?は確実に強者が弱者に向ける笑い混じりのは?なの。


笑い。イコール嘲笑。微笑むとかじゃない。嘲笑。僕を完全に自分より下に見ている「は?」。



故に、結果。



「いって!」


「死ね。」



僕の人生を賭けた渾身のデコピンをお見舞いしてやった。マジでムカつくわこいつ。



「最近彼女ができて付き合いも悪い奴に言われたくないわけですよ。」


「まぁそれは事実なわけだけど。俺の加奈子かなこは可愛いわけだけど。」


「…よし、こっちこい。風穴開ける。」


「やめれ!」



デコピンをかまえれば、松木がデコを隠して慌てている。馬鹿が。デコピン王の僕に逆らうからだ。



「でもさー、松木の言葉も一理あるわけよ。最近マジでニヤついてる時あるよ。キモいよマジで。」


「秋田君。君は僕の幼馴染だよね?付き合い長いよね?大好きな親友にそんな暴言はいけないと思うんだ。」



普通に眉を下げて同情するように辛辣な毒を吐く僕の親友。もしやこれは片思いなのか?

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