第13話

僕と彼女の接点なんてあの図書室での数分の会話くらい。だけど彼女はなぜか僕を気にかけてくれている。



まさか僕のことが好きなんてことはまずないのに、なんかあっちから話しかけてこられたりあんな風に手を振ってきたりしたら、勘違いしちゃうじゃないか。



「ワンワンワンワン!」


「おい!うっせえって!」



そんな感傷に浸ることも、我が家の愛犬はさせてくれない。学校から帰ってすぐ、母さんに厳命された散歩。



『母さんもね、たまには休みたいのよ。』



何言ってんだと若干引いたが、今日散歩にはじめて行って理解した。普段家で吠えまくるバウが外で吠えないわけがない。



すれ違う人や犬を見るたびに吠え、道に咲いてる花にまで吠えている。こいつ、絶対バカだよな。しかもちっせーくせに紐を引く勢いがやべえ。


デフォルトで陰キャの僕がひたすら引っ張られる。



主導権をバウに握られ、吠えられた通行人に謝り倒し、吠えるのをやめろと怒鳴り続けて15分。もう帰りたくなってきた、その時だった。



「あ、久住くんだ。」


「は?」



後ろからなんか聞いたことのある可愛い声が。振り返れば飯倉穂乃花が制服姿で立っていた。



「この辺住みなんだね。気づかなかったよ。」



ニコニコしながら近づいてくる彼女に放心していて、反応が遅れた。バウがいるんだった!



危ない!そう叫ぼうとしてバウを抑えようと振り返ってまたはた、と止まる。




「可愛い。バウちゃんでしょ?」


「くううーん。」



放心していた間にすり替えられたか?そう思うほど従順になったバウがはちぎれんばかりに尻尾を振って飯倉穂乃花にすりよっている。

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