第9話
「ふふっ、治ってないんだ?」
「…全く。母さんが頑張っては、いるんだけど。子犬だし。」
調べて始めて知ったんだけど子犬の吠えるのにも種類があるらしい。夜鳴き朝鳴き、甘え鳴き、あとなんだっけ?ちなみにうちのバウは全てを網羅している。
「名前は決まった?」
「…ああ。バウって。」
「バウ?」
「すげー吠えるからって、母さ、母が。」
なぜ僕は今母さんを母と言い直した?
「可愛い名前。」
「そう?変じゃない?」
母さんが八つ当たりでつけた名前だし。
だけど飯倉穂乃花は首を横に振る。
「ううん。可愛いよ。バウ、バウちゃん。可愛い。」
はい。バウよ。お前はこれからバウちゃんです。オスだけどな。今我が家で吠えているであろうバカ犬のことを思い浮かべて小さく頷いた。
「あ、もうこんな時間だ。じゃあね。」
「ああ、うん。」
飯倉穂乃花が僕に手を振って背を向けて去っていく。その後ろ姿を呆然と見ながら、心臓が高鳴るのを感じる。
とりあえずバウのおかげでこの状況があるから、帰りにペットショップに寄って子犬が食べられるお菓子を買って帰ることにする。彼女と話すためならバウの近状をしっかりとスマホのメモに書き留めておく必要もあるかもしれない。
どっかで見たけどモテの要素にペットも効果的と書いてあったがまさかこんなところで本領を発揮するとは。小さくガッツポーズをして踵を返した。
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