僕と君の歩み
第8話
あれから、図書室で話したからといって急に仲が発展したわけでもなく、僕はいつもの日常を過ごしていた。ちなみに、ワンちゃんこと吠えまくり犬は吠えが過ぎるからバウというめちゃくちゃな名前をつけられた。
多分母さんの意趣返しみたいなのもあったのかもしれない。
あれからバウは朝吠え夜吠え、もちろん昼間も吠え。吠えまくりで家ではヘッドフォンが欠かせない。といっても1ヶ月くらいすれば母さんの躾が素晴らしいのか吠えないことも多くなり、さっそく僕が借りた本の効果が出始めているな、そう思っている。
なんせあれは飯倉穂乃花のなにやら甘く可愛い効果が入ってるはずだからな。
吠える意外は結構甘えてくるし可愛く思う時もある。吠えるけど。ちなみにご近所にはメロンを配ってすぐに躾けますからと両親揃って挨拶に回ったから大丈夫。問題のうるさいおばちゃんの所はワングレード上のメロンにしたからなにも言って来ないでくれと家族総出で祈った。
「あ、ワンちゃん、元気?」
「…へ?」
そんなある日、廊下で誰かに話しかけられた。いつも僕にくっついてくる秋田と松木がたまたまいない、1人で歩いてる時だ。
振り返れば飯倉穂乃花が僕を見て笑っていた。可愛い。なんだその笑顔。なんて現実逃避に近いことを考えながらも、頭はうまい言葉が消去されたように働かない。
なんか言えなんか。なんか、なんか!
叫ぶ自分がアワアワして頭を抱えているのが想像つくのに、口が動かず、思わずつばを飲み込んだ。
「あ、えーと、ワンちゃんね、ワンちゃん。うん。元気。」
「そっか。吠えグセは治った?」
「全然。」
なぜか”全然”だけは食い気味に言えた。だってマジでうんざりするほど吠えるからねあいつ。
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