かゆい

第55話

「マジだ…。」


「え、マジ?」



もはや語彙力の死んだ私は小さく頷く。


受け取った手紙は予想通りというか、桜森さんの言うとおりになってしまったことを嘆くべきか、蓮水氷鷹さんからのものだった。


季節も春になり、いかがお過ごしでしょうか、から、自分が私に好意を持った経緯に続き、最後にはメッセージアプリ【LUIN】のIDで締めくくられていた。


しかも、今度お食事でもとしつこくない程度で誘いも入っており、それが読みやすい方の超達筆で書かれていたから、粗の探しようもない。



「マジかー!」



机にひれ伏す真姫を見ながら、私はボーッとあの人のことを考える。



悪い人ではなさそう。容姿は申し分ない。スペックも高すぎくらいある。だからこそ思う。



…なんで私?



失礼だけど罰ゲームを疑ってキョロキョロしちゃうくらい考えられないのが悲しい。



だって私だよ?真姫ならともかく。


もう一度手紙を見ても、どう見ても私宛て。



嬉しいとは思う。だけどプレッシャーと戸惑いの方が大きくて、もはや困惑しかなかった。



「どうすんの?」


「どうしましょう。」



正直今のところ、彼の好意に頷くという選択肢はなかった。存在が凄すぎてあり得ないから。

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