第41話
だけど違う。壇上で桜森さんが蓮水氷鷹の代理で祝辞を読んでいるのに、来賓席に本人いるんですけど!
何度も見たけどあの美貌は間違いない。いや、壇上にいる桜森さんもものすごい美形なんだけども!
桜森さんは茶髪にタレ目、優しさの滲み出ている笑顔と、蓮水さんとは対象的なちょっとほんわかした雰囲気の人。
だけど優しいながらもどこか場が締まるような厳格なオーラといいますか。まさに誉人の最側近に相応しい出で立ちは、蓮水さんに次いで人気者という事実を否定させない。
冷たい印象の蓮水さんと並ぶと迫力がある、というか。そんな人なのに今は空気に近い。
会場の目はすべて、来賓席に。しょうがないよね。誉人様が無表情で堂々と座っていらっしゃるんですもの。
改めて見ると素敵な人だ。見た目もいい上にこの大学なんか足元にも及ばない超名門大学ご出身。職業社長。財閥の息子。どこをとっても完璧に見える。そんな人が誉人なんて、そりゃそうでしょと思ってしまうのはしょうがない。しかも、人類の数%の中から更に1人だけ選ばれるという運まで持っている。
そりゃみんな目の色を変えて彼の奥さんになりたいってなるよね。自己承認欲求がすごい女性なんて世の中に腐るほどいる。そういう私だって、ああいう人が彼氏だったら周りは羨ましがるだろうなーくらいには思う。
…だからといって現実そうだったら色々なストレスで胃に穴が空きそうだけど。
私はあの人を隣に鼻高々できるほど、肝の座った人間じゃない。
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