第38話

「まぁ、周りにいる女があんなんばかりだと、そりゃ恋愛下手にもなるよな。」


「…誰が恋愛下手だ。」


「事実だろうよ。」



敦斗のからかうような声に、反論できない。今までの俺は、上手く恋愛してきたとは言えないからだ。どの女も、一声かけただけで頷き、中学生でも知っているデートを重ね、欲望のまま体を重ねる。その中に女からの気持ちはあっても、俺からの熱のこもった気持ちは向けてやれなかった。



そのせいかもしれない。女たちはすぐに豹変し、それを俺はゴミのように捨ててきた。



「だからこそ、今回は慎重に動いている。」


「それで結局あのオーナーが釣れた、と?」


「…俺の女を魚扱いするな。」


「だから。その言い方したらあのオーナーがお前の女みたいだろ。」


「チッ。」



2日。たった2日だ。ケーキを買いに行っただけであの店のオーナーの女は俺の妻になる気でいる。後に調べれば、既婚者であるはずなのに、だ。敦斗の言葉は言い得て妙で、俺はあの店でケーキを買った結果、あのオーナーが釣れた、というわけだ。



女の名前はなんだったか。もはや覚えてもいないあの女は、親戚中に誉人の妻に自分が選ばれたと触れ回っているらしい。恐らく有栖の訪問もそのことだろう。不思議なものだ。自分も昔から同じことをしてきたくせに、他の女がすれば非難するとは。あのオーナーの女と同様に、自分も嘘を触れ回っているというのに。



今までそれを放っておいたのは、止めても無駄だと知っていたからだ。有栖は俺のいとこにあたる。俺が誉人になった時点でなぜか有栖の家の地位も確固たるものになってしまっているから。

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