第32話

一目惚れ。なんてアホらしい理由だろう。



あの日、不意に視線の端に写った彼女の顔が忘れられない。



料理を頬張る笑顔も、香坂の娘と話す時のコロコロと変わる表情も好ましかった。



立場的に花嫁選びは慎重にしなければならない。だから彼女を調べるのも、側近の中でも筆頭である敦斗だけを動かしたほど。



そして今回、彼女とまずは知り合うことから初めなければならないと、バイト先のカフェの客になることにした。



流石にともをつけないのはまずいと言われたし、俺自身が直接買い物をするのは違和感がありすぎると指摘されたが、正直側近の誰だろうと彼女に近づくのは了承できない。



敦斗の冷たい視線を感じながらも単独で突っ込むことに決めたのだ。

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