第23話
店内を流れる有線の音楽を聞きながら、あとホールケーキを1個ずつ包装すれば終わりというところで。カフェの扉が壊れんばかりに激しく開いた。
「いらっしゃい…。」
「氷鷹さまぁ!いらっしゃってくれたんですね!」
「ませー。」
入ってきたのは我らがオーナー。年は36。バブル期かみたいなぴったりワンピに身を包んで、豊満ボディーを揺らしながら蓮水さんのところまで駆け足で近寄っていく。
「この間のパーティーでお会いして以来ですね!もしかして私を見初めてくださったんですか?なんて、冗談ですぅー。」
きっと冗談じゃないですぅ。心の中でそう吐き捨てながらも、ケーキの包装を急ぐ。私のいらっしゃいませを返してほしい。
「松村さん。」
「なに?」
蓮水さんを前にはしゃぐオーナーを横目に、こちらはこっそりと会話中です。
「オーナーって、誉人の関係者だったんですか?」
「そうよぉ。確かすごく遠縁なんだけど、親戚らしくて。この間パーティーに行ったら目が合ったって夜中の3時に電話かけてきて大変だったのよー。」
「あらー。それは災難でしたね。目が合ったって。アイドルのコンサートに行ったファンみたいですね。」
「でもこうして会いに来てるんだからまさかが起こったのかもよ?でも旦那さんはどうするのかしらねぇ?そういうのって気にしないのかしら!」
誉人って大胆ねぇ。そう続ける松村さんに苦笑いを返した。そう。オーナーは既婚者。旦那さんとの間に子供はいないけど、れっきとした人妻なのだ。まぁその旦那さんがまたまた残念野郎だからな。オーナーとは別日に店にやってきてバイトの子を片っ端から口説くクソ野郎だし。私も電話番号聞かれたわ。今どき電話番号って。
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