第20話

誉人って、ケーキ食べるんだな。しかもなんか嬉しそうじゃない?まさかの甘党とか可愛い。



なんて思いながらも、笑うわけにはいかないから平静を装う。



「お待たせいたしました。7万1320円です。」


「これで。」


「はい。お預かりいたします。」



クレジットカードを受け取りながら、こういう人に高額だとしても『一括払いでいいですか?』って聞くのは失礼なんじゃないかと思ってしまう。



当たり前だろう!って怒るおじいちゃんとかいるもんなぁ。


「お支払回数は、1回でよろしいですか?」


「ああ。」



一括払いじゃないと恥みたいなあれ、なに?


なんとなくそう思いながら処理をしていると、蓮水さんに動きがないことに気づいた。


目をやれば、目が痛くなるほどの美形がこちらを見ている。ここまで来るとイケメンと呼ぶのも失礼なレベルだな、なんて思いながら笑う。



「失礼しますが、暗証番号をお願いできますか?」


「…ああ。」



今気がついたかのような動作で蓮水さんが指先を画面に合わせる。うちの機械は暗証番号のテンキーが順不同で表れる。店内の光の加減のせいか、若い人でも目を凝らして打ち込まないと大変。ていうか、暗証番号を見られないようにするやつ、いる?まぁ、この人くらいのクラスになれば暗証番号知られるのは大変か。



やっぱり彼も見にくいのか、体ごと前のめりにならなくても目を細めて番号を探している。店員としてはそっぽを向いて暗証番号見ていませんよー、を装わないといけないけど、ちょっと可愛い蓮水氷鷹を見られる激レアチャンスなんだから見逃せないよね。



そこへ、暗証番号成立の音が画面で鳴る。いけないいけない。咄嗟に視線を外した。



「ありがとうございます。お包みしますので、あちらにおかけになってお待ちくださいませ。」


と、本来は案内しない飲食スペースを手で指す。だって量が多いんだもん。誉人様を立ったままお待たせするわけにはいかないもんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る