アプローチ

第19話

美味しいブッフェから、2日後。



「…全種類、2つずつくれ。」


「…。」



バイト先のカフェに、その人は現れた。


「どうした?」


「あ!はい、すいません!全種類2つずつですね!」


「ああ。」



レジのタッチパネルを見るも、指が迷う迷う。私の動揺を表しているかのように右往左往する指先を見て現実逃避を試みても、これを誰が注文したと考えればまた頭が混乱した。



チラリと見れば、極上の笑顔がこちらを見ていて、顔が熱くなったのを感じる。慌てて視線を逸してタッチパネルに集中。大丈夫。ここに勤めてもう3年目。動揺しててもやればできる!



自分を鼓舞してひたすらタップしていく。考えてみればうちのケーキ全種類2個ずつなんて簡単じゃん。



「あの、ホールケーキはどうされますか?」


「…ああ、ホールは1つでいい。」


「かしこまりました。」



ひたすら画面をタップする単調作業をしていたら、ようやく落ち着いてきた、気がする。だけどホールケーキのことを聞こうとまた彼を見たら、その笑顔にまた顔が熱くなった。



(パーティーの間、ひたすら無表情だったのに。)



公式の場だったからか最後まで見ることのなかった笑顔は破壊力抜群で、これはいいものを見たなと得をした気分になった。

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