第18話

(うわ、やば。)



その人は確かに、神に選ばれたと言ってもいいほどの見た目だった。



濡羽色ぬればいろの髪を後ろに流し、絵画で描いたような違和感ひとつない切れ長の目は、ただ前だけを見据えている。濁りのない銀色の目は神の色。その目を向けられればときめいてしまうのは必須だろう。



芸能人みたい、なんて、見たこともないくせに思う。だけど誉人である蓮水氷鷹なんて、テレビのニュースや雑誌で見るくらいしかないから、案外芸能人と変わりないのかもしれない。



長身でスラリと伸びた手足。服を着ていても分かる引き締まった体。薄い唇は開くことなく、それが笑みを浮かべていればと残念に思った。



誉人なんか私ごとき庶民が会うなんてまず無理。道ですれ違うことすら無理なんだからできれば笑った顔も見ておきたかった、なんて。



「綺麗だね。」


「…まぁ、一度拝んだら忘れられない顔よね。眼福だわ。」



シンとしている室内。奥にある専用の休憩スペースに向かうその背中を目で追いながら、ミーハーが2人。



「氷鷹様!」



そして彼の到着を待っていましたとばかりに叫んだ有栖美月の甲高い声をバックに、戻ってきた喧騒に紛れて美味しい料理を堪能した。

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