第17話

ざわり。会場が一際大きく沸く。



「うげっ。来たよ。」


「ふふっ、主役なんだから当たり前でしょうに。」



真姫の毒を聞きながらも、正直私の視線もフロアの出入り口に釘付けだった。



この世の頂点。選ばれし人、蓮水氷鷹。どんな人なのか、単純に興味があった。



生まれた時にはすでに人間の上を行く存在だと決められた人。



お伽噺の主人公。



でも、今日の私と真姫は感謝しなくちゃいけない。だってこの高級ホテルの最高級ブッフェにありつけているのは、この人主催でパーティーが行われたからだ。



そんなことを考えながら出入り口を見ていると、騒がしかったフロアから音がすべて消えた。



もちろんただの表現じゃない。文字通り、消えた。



誰もが息をするのすらはばかり、彼を見ている。給仕の人たちも足を止め、彼の一挙一動を目で追っていた。



食器のぶつかる音すら聞こえず、衣擦れの音もない。



誰もが息を潜める中、視線すら動かさないその男が一歩を踏み出した。

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