第11話
蓮水氷鷹の蓮水家は昔から続く貴族の家系で総理大臣も排出した名家であるらしいし、四季正臣の四季家は警察機関のトップを努めている者が多い。
氷鷹と正臣は”先祖返り”だという。
誉人は人間のように脈々と血を繋いでいく存在じゃない。まるで神が血を垂らし、もたらしたかのように、世界のどこかに生まれ落ちる存在だ。だけど誉人は先祖返りと呼ばれている。
初代誉人がその時代に生まれ変わっているとみられているから。
だから、蓮水氷鷹も四季正臣も彼らであって彼らじゃない。彼らは誉人。それ以上でもそれ以下でもない。
それはそれで可哀想だな。子供の頃、私はそう思ったことがある。
誉人は容姿、知能、才能、あらゆるものに優れ、絶対的な存在。人々に崇められるべき存在。
それは職業でもあり、運命でもある。なんて。
そこに個人は存在するんだろうか?
全世界、どんな境遇の人でさえ知る御伽噺。その物語の主人公である彼らは、彼らであって彼らじゃない。
『そんなの、寂しいよ。』
両親から聞いたところ、5歳の私はそう呟いたんだとか。
とにかく私は、遠い存在のその高貴な生まれの人達のことを憐れみながらも、どうせ会うこともない人生を歩んでいくんだろうと、そう思っていた。
だけど、高校に入ってからできた友人。
誉人の親戚に当たる名家の生まれのこの香坂真姫に誘われたパーティーで、まさか自分の人生が大きく変わることになろうとは、パーティーのご飯狙いだった私が知るはずもなかった。
氷鷹に会った私は、幸せにも不幸にもなった。
普通の家で育って、普通の生活を送るはずだった私の人生が、めちゃくちゃになったんだ。
それでも、今幸せな私はきっと、頭がおかしくなったのかもしれないね。
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