第5話
ためらいもなく玄関のドアが開く音がする。ノックもない。勝手知ったる、とばかりに、まるでそれが自分の家かのように。
響く数人の足音。リビングの扉の前で立ち止まる。
それはきっと、今ひとつだけ響いている足音の主を通すため。
先に安全確保。大事な要人はあとから。彼らのルール。
それが普通の世界で生きてきた人たち。”選ばれた人”は、違うよね。
自嘲の笑みが漏れた時、リビングの扉が開かれる。勢い良く開いた扉が模様を作る。生きていた人を巡っていた血がまるで邪魔なもののように扉で掃除される。
ああ、私の大事な弟の血が。
呆然とそれを見ている私に構わず、その人物は血の海の中を堂々と歩いてくる。
悔しいくらいに整った顔は憎たらしいことにこんな光景も見ても歪むことはない。
絶対的なオーラを背にゆっくりと進めば、鉄の匂いをかき分けるように華のような香りが香った。
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