第4話

『…ぅ、ああ。』



頬を流れる涙を止める術はない。喉の奥から湧き上がる叫びがまるで暴れているかのように、裂けんばかりの痛みに耐えていたから。



泣き叫びたい。なんで!と誰かを罵りたい。それなのに、リビングに広がる静寂は、私以外に生きている者がいないことを表している。



ようやく、足が反応したのか、立ちすくむだけだったそれの力が抜ける。



ゆっくりと落ちていく視界。



お母さん。


お父さん。


…弟の、弘樹ひろき



なんで、血まみれなの?


なんで、そんな…。



リビングにただ座っていると、外で車のドアの音がした。



頭の中は混乱しているくせに、耳だけは冷静に音を拾う。



何人?4人くらいいるかもしれない。



誰が喋っているわけでもないまま近づいてくる足音は、リビングのすぐそばにある玄関扉の前を目指している。



そんなに、耳が良いわけない?そりゃそうよ。



だって私は、今家に誰が来たか、知っている。



だから私の都合の良い耳は、そう聞こえたのだから。

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