第6話

艶のある濡羽色ぬればいろの髪は後ろに撫で付けられ、一房だけ垂れ下がった前髪が色気を醸し出している。


”凄惨な殺戮現場”の中を歩いているのに、彼の周りだけ輝いて見えるのが、不思議。



彼の瞳は”銀色”。神に選ばれた【誉人ほまれびと】の証だ。


人々は彼を崇め、その美しさに魅入る。


だけど、血の海の中を気にすることなく進む美しい彼の銀色は、その濡羽色の髪も手伝って、まるで不気味な場所で出会ってしまった不吉な黒猫のように見える。



ゆっくりと歩いてきたその人は一切の感情も写さず私の前に立った。



座り込む私を見下ろすそのさまは彼自身が堂々としているのも手伝ってまるで見下しているかのよう。



だから腹が立ったのか。いや、私は分かっている。



彼に感じているこの怒りの原因がなんなのかを。

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