第66話

「・・・ごめんなさい」



小さく呟いた私に、奏が呆れたように溜息を吐いた。



「はぁ、いい加減分かれ。俺はお前じゃないとだめなんだ。

俺の気持ちを疑うな。」



「うん。でも不安になるの・・・」



「ああ、確かにあのしつこさは異常だな。現に今毎日事務所に来てる。」



「えっ?!」



「心配すんな中に通してもいないし新城組全員に親父が顔写真と一緒に要注意人物だと通達をしている。懐柔されるようなバカは居ないしな。それより、あの女のバックがめんどくせえ」



「黒蛇ですか?」



「いや、黒蛇もだがそのバックの神崎組の若頭の愛人らしい。あいつは今までの女を見ても思ってたことだが・・・ロリコンだな。」



気持ち悪りぃ、とちっと舌打ちをする奏。今はその人の好みの話じゃなかったはず・・・



「神崎とは敵対関係でな。俺の唯一の弱みを攻めようってことだろ。あそこはなんでもありの卑怯な組だからな。」



私が弱み?なら離れた方が奏のため?



「・・・離れた方が俺のためだと思ってるならやめとけ。手もとにいない方が俺のためにならねぇから」



エスパーだ・・・



「神崎に関しては他の組みからも苦情が来ててな。黒蛇も。お前の妹も迷惑だからこの際まとめて潰すから。」



あっさり言ってるけど、



「それって凄く大変なことなんじゃ?」



「いや?卑怯なことばんばんしてくるから多少は面倒だろうが、潰すくらい造作もねぇ。それに俺の女が絡んだ時点で親父が動く。てことはあいつらは新城組全てを敵にまわすんだ。チリひとつ残らねえだろうな」



ち、チリ・・・



「ひとつ聞いときてえことがある」



「なんですか?」



「俺達は極道だ。お前の妹は無事では済まない。妹に未練はないか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る