第50話

一通り笑った3人はやっと落ち着いたのか、組長さんが口を開いた。




「新見ゆいかちゃん。初めまして。新城祐司だ。これは美里。

君に起こったことはすまないが全て聞かせて貰った。

蓮がしたことは親として本当に申し訳ない。

今は奏が君に惚れ込んで強引に言ってるみたいだが・・・

君が望まないなら婚約なんかしなくても、成人するまでの援助はするつもりだ。どうかな?」



「親父!」



鋭い目で睨む奏に、



「・・・お前は黙ってろ。」




まさに新城組の組長といった睨みを聞かせてさすがの奏も黙らせた。



でも、私はもう・・・




「あ、あの・・・」


「ん?何だね?奏に遠慮せず、思ったことを言ってみなさい。」



優しく促してくれる。



「あ、あの、私はあの日、死ぬつもりだったんです。この世に絶望して、未練はありませんでした。今もちょっとしたことでスイッチが入ることがありますし、夜中もうなされます。でも、そんな私を奏は、愛してるから面倒みるのは当たり前だと言ってくれました。

自分に愛されてるのを誇りに思えと。

私を唯一愛してくれたのは奏です。

だから私は、奏を必要とし続ける。

逆にこんな私が奏に相応しいかの方が心配なんです。」



「・・・・・いい!」



今まで黙っていた美里さんがいきなり叫んだ。



「気に入ったわ。これ以上はいいでしょ?あなた。ただ、奏の嫁になるということは、貴方が体験したより怖い思いをする可能性があるわ。もちろん奏が守るけど。覚悟はあるかしら?」




鋭い眼で問いかけられる。




「はい。覚悟はあります。一度捨てた命は奏のために使うと決めたんです。」




「なら何も言わない。こんな鬼畜野郎だけど、よろしくたのむよ?ゆいかちゃん。」



「はい。」



気が付けば、奏が静かだ。どうしたのかと隣の奏を見れば、奏は満面の笑み。



「お前、やっと俺の女になったんだな」



私をぎゅっと抱きしめる。



「ありがとう。一生大事に幸せにしてやる。覚悟しろよ?」



「うん。」



ご両親はそんな私達を微笑んで見ていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る