第49話

家に入ると凄く貫禄のあるおじさんが奏に頭を下げた。



「お帰りなさいませ若。親父は姐さんと椿の間でお待ちしています。」



「ああ。」



おじさんは私に向き直ると頭を下げた。



「初めまして若姐さん。私組長の側近をしております、陣と申します。この度はご婚約おめでとうございます。」



「あ、ありがとうございます?」



「ははっなんで疑問系なんだよ」



奏に笑われたので私が頬を膨らましていると、



「そんな顔してもかわいいだけだぞ?」



なんて茶化す奏を見て陣さんは驚いている。



「・・・若がこれほどまでとは・・・

若、本当に、おめでとうございます。」


「・・・ああ」




深く頭を下げる陣さんを見る奏の目はとても嬉しそうだった。



長い廊下を手をつないで歩く。



椿と書かれた襖の前までくると、



「・・・入るぞ。」



と声をかけて奏が襖を開けた。



中には着物を着た男女。



雰囲気が似ているからこの人たちが奏の両親だろう。



組長さんは鷹の様な目をしていていわゆるワイルド系。蓮にそっくりだ。身体が少し震えてしまい、気付いた奏が肩を抱いてくれた。



奥さんは極道の妻には見えない柔らかな雰囲気の美人さん。

切れ長の目に漆黒の髪。奏はこの人に似たんだろうってくらいそっくり。



「親父、お袋。俺の女のゆいかだ。婚約するからな」




すらっと言った奏に私は開いた口が塞がらない。と、とにかく自己紹介だ。



「こ、こんにちは。ほ、本日はお日柄もよく?ぜ、絶好の婚約日和で・・・私新見ゆいかと?あれ?もう新城だっけ?あの、それです。すみません。」




尻すぼみになっていく私は下を向いて落ち込む。しばしの沈黙が怖い。すると・・・




「「「ぶっ!!!」」」




親子3人で一斉に吹き出し、笑い出した。



「お、おまっ、婚約日和って!」



腹いてえなんて言って爆笑している奏を睨む。

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