第44話
会社のエントランスに入ると、受付嬢を筆頭に、その場にいる社員が皆口をポカンとあけてこちらを見ている。
全ての目線は私の腰に添えてある奏の手に注がれていて‥‥
・・・何?
急に立ち止まった私に奏は顔をのぞき込んできた。
「ん?どうした?ゆいか」
優しく微笑む奏がいつも通りでなんだかほっとしたけど、周りが息を呑む。
「ねぇ、なんで皆こんなに驚いてるんですか?」
その質問に答えたのは後ろにいる隼人だった。
妙に近い隼人が、私の耳元に口を添えて話すから、怖くなった私は身を捩る。
「奏はね、誰にでも鬼畜野郎なんだけど女には特にでね。連れて歩くだけでも普通じゃないのに腰を抱いて歩いたり、優しく問いかけたり、ましてや・・・」
そこまで聞いて私は奏にふわりと抱きしめられる。
聞こえてきたのは低い低い声。
「隼人てめえ俺の女に近付いてんじゃねえぞ!」
唸るようにいう奏に隼人は続けた。
「ましてやこうやって嫉妬を丸出しにして獲物を守る禽獣みたいなまねはしないってこと」
だから皆驚いてるんだよと続ける。
なんだか照れくさかったけど、とても嬉しかったから、自然と笑みが漏れる。
だから、腕の中で微笑む私を見て、奏が顔を真っ赤に染め、周りの人だけでなく隼人も一緒になって驚いていたなんて、嬉しさで一杯の私は気付かなかった。
突き刺さる視線を気にしつつ社長室へのエレベーターへ乗り込む。
その間奏はずっと私の手を握っていた。
社長室に着くと奏は再び私の腰に手を添え私を促す。
社長室の手前には、秘書がいつもいるであろう受付らしき机がある。
そこにはめがね君・・・もといめがねをかけた男の人が笑みを浮かべてこちらへ視線を向けていた。
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