第43話

今白虎が私を探しているので、服を買いに行くのはお預けになったため、隼人が用意してきたもので生活している。



とりあえず下着のサイズがぴったりだったのは指摘すると疲れそうなので黙っておこう。



白虎の倉庫で、まりかのお下がりを着ていた私を見てきたせいか隼人が揃えたのはピンク系のものばかりだったけど、



奏が「捨てて黒を中心に買ってこい」



と吐き捨てるように言ったから、私の気持ちをわかってくれてるようで、思わず奏の脇の服を握ると、彼の優しい笑みが返って来た。



ピンクは大嫌い。まりかが大好きだから。



私は黒が好き。全てを包み込む黒が好き。



奏のような、黒が好き。



私は隼人が用意したスーツに身を包み、顔が分かりにくいようにめがねをかけて奏の会社新城コーポレーションへ向かう車に乗っている。



今日から初出勤だ。



家にずっといるよりはいいからと夏休みでならし、学校が始まれば二足の草鞋でやっていくことを決めた私に、奏は嬉しそうに頭をなでて頷いてくれた。





あー、緊張する。





「・・・どうした?緊張してんのか?」




意地の悪い笑みで言ってくる奏を横目で睨みつければ頬にキスが飛んできた。



最近奏は必ず私のどこかしらを触っている。



油断したら口にするので私はいつも落ちつけない。



それ以上は同じ気持ちになったらと言ってくれてるけど、奏ほど大きな気持ちをもてるか不安げな私に大丈夫だと自信満々で言うから笑ってしまった。



なんだかんだ揉めてるうちに、車はめちゃくちゃ大きなビルの前に滑り込む。




わ・・・まさか?




「奏?まさか、ここが?」



「ああ、俺の会社。」



めちゃくちゃでかいじゃないですか。


ますます、不安になる私をよそに奏が車を降りた。



「ゆいか?降りねえなら抱いてくぞ?」



本気でされかねないので、さっと奏の手を取り車を降りた。



すかさず奏は私の腰に手を添え歩き出す。



なんだか奏の態度に緊張するのが馬鹿馬鹿しくなって開き直った私は一緒になって歩き出した。

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