第39話
おかしくなったのは妹、まりかの存在が分かってからだ。
見た目も中身もゆいかと正反対で、明るく、すぐに下っ端たちと仲良くなっていた。
俺も愛してる女の妹だ。極力優しく接した。
ある時、ゆいかが用事があるからと倉庫に行くのを断る日がたびたびあった。
おかしいと思いながらもたいして気にしはしなかった。
そんな日は大体、まりかが大量の差し入れとともに倉庫に来るもんだから皆日に日に気にしなくなっていった。
皆で騒いでいるとまりかは必ず俺に缶コーヒーをくれた。
毎回種類の違うそれを段々楽しみにしている自分がいた。
そんなとき、まりかが泣きながらゆいかが左に大量のピアスを付けた白髪の男と腕を組んで歩いていたと言ってきた。
昴が思い立って顔写真を見せると、黒蛇の総長だった。
最近倉庫に来ないゆいかをおかしいと思っていたのも手伝って、よく調べずに俺の心は嫉妬でいっぱいだった。
それからはゆいかに妬いてほしくてまりかに優しくしたり、迎えをやらなかったり。はじめはただの嫉妬だったのが暴走していた。
そしてあの日、黒蛇の下っ端の証言と写真。
頭に血が上っていて写真のゆいかをよく見れば苦痛にゆがんでいる顔に気付けなかった俺は、隣にいるまりかを激しく抱いた。
言われるまま責め立てて、2人で絶頂に上り詰めた。
まさかそれをゆいかに見られていたなんて。嫉妬と快楽に呑みこまれ気付けなかった。
まりかと総長部屋をでると昴が真っ白な顔で問いただしてきた。
他の奴らも真っ青だ。
そんなやつらを不思議に思っていると、まりかが口を開いた。
まりかの綺麗な口から紡がれる、人間とは思えない出来事を俺はただ呆然と聞いていた。
ゆいかが倉庫に来れなくなった訳、最近無くしていた表情の理由、缶コーヒーの意味。
吐き気がした。自分に。
そういえば最近嫉妬に狂って何かしてしまいそうでキスどころか手すら握らなかった。
まりかとはしょっちゅう手を繋いでいたのに。
だから体の怪我にも気付けなかった。
挙げ句の果てにまりかと・・・
昴に聞けば最後に見たゆいかの目は光を失っていたと。
俺の愛する人はあの日すべてを失った。
まだ死んだという情報が入っていない以上あきらめずに探し回った
まさかゆいかが全てを失ったあの日、俺の兄貴と運命の出会いをしていたとは知らずに・・・
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