第29話
部屋の中に入ると黒で統一されたほとんどなにもないリビングだった。
・・・広い。
しかも何も置いてないから更に広く見える。
その中心に4人がけくらいの対の黒いソファー、誕生席に1.5人掛くらいのまたまた黒のソファー。机もテレビも黒。
・・・・・まぁ黒好きだからいいけど、黒多すぎじゃない?
奏は私を誕生席ソファーに座らせると着替えを取ってくると寝室らしき一室へ消えていった。
隼人さんと2人きりになって凄く気まずい。
しばらく2人、黙っていると、口を開いたのは隼人さんだった。
「ゆいかちゃん、俺からも謝罪させてもらうよ。ごめんね。」
ホントにすまなそうに謝っている隼人さんに私は固まる。
「・・・謝られる意味が分からないんですが?」
「俺は蓮の前の総長だったから。
任命したのは俺だから今の白虎の失態の責任は俺にもあるんだ。」
「・・・・・」
先輩だからとかそんな理由なんだろうか?女の私には分からないことだな。
それに・・・
「総長の彼女というだけで全員で守らなきゃいけないのは知ってます。でも、少しは白虎が悪いかも知れませんけど、全て悪いのは妹のまりかです。いや、私が生まれてきたせいだから私のせいかな?」
そう、全ては私が存在するせい。
私がいなければ妹は今頃中身も天使な良い子かもしれないし、蓮も苦しまずにまりかと幸せにしてたかもしれない。
やはり私は死んだほうが・・・
「・・・ふざけるなよ?」
遠い目をしていた私が声がした方を振り向くと、着替えを取って来たらしき奏が怒りに顔を歪めて立っていた。
「・・・奏?」
「生まれてきたせいだなんて言うな。お前はひとつも悪くない。悪いのはお前を傷つけてきたやつらだ。」
それに・・・と奏は私をふわりと抱きしめた。
「お前が存在しなければ俺はこんな気持ちを知らないままだった。
俺がお前を必要としてるんだ。大人しく俺に愛されとけ。」
・・・この人は私に必要な言葉を必要な時に言ってくれる。
恐らく今、この言葉を聞かなかったら私はいずれこの世から姿を消しただろう。
それくらい今の私はいつでも”生”を終わらせようとしてしまう。
そんな私を引き戻す、奏の心が心地よい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます