第26話

滑らかに滑り出した車内は、奏の口から放たれる、演歌だけが響いていた。



「あのー・・」「・・・♪、」


「ちょっと?」「♪~・・・」




「あの!」


「・・・なんだ?」



ようやく、私に答えてくれることになったらしい。



「・・・この状況、なんとかなりません?」




私は今、後部座席に寝た状況で奏が膝枕中。前の隼人さんと鉄さんは二人揃って”アリエナイ”を連発しながらチラチラこちらを見ている。




だから非常に居心地が悪い!




なのに奏はずっとにこにこしながら私の髪をいじってこの状況なんてなんとも思ってないよう。



「ん?大丈夫か?酔ったのか?」



あなたの甘さに酔いそうです!



奏がとにかく甘いのでなにか言えば更に疲れそうと判断した私は口をつぐむことにした。



どれくらい経っただろうか。ただぼーっとしていると隼人さんが話しかけてきた。




「ゆいかちゃん、今から奏のマンションに行くんだけどこれからの生活はそこでだから。

他に【本家】っていって奏の親父さん、この場合新城組の組長が住んでる家があるんだけどそこにも出入りすることになると思う。

落ち着いたら挨拶に行く予定。ただ、」




言い淀む隼人さんに、視線を上げる。



「ただ、なんですか?」



私が続きを促すと申し訳なさそうに、




「本家には蓮が住んでるからもしかしたら会うことがあるかもしれない。

どちらにしろ奏と結婚すれば兄弟になることになるんだけどね?」



蓮の名前を聞いて 激しい嫌悪感が生まれた。

バッタリ会って軽蔑の目を向けられる光景が頭に浮かぶと鳥肌が立ち、吐き気が襲ってきた。



あの時、まりかとベッドの上で激しく絡み合い深く繋がる2人を目の前で見ていた。


ふと気付いたまりかは笑みを浮かべ更に激しく喘ぎだす。



もっととせがむまりかにさらに激しく答えていた蓮の額には汗が・・・



「・・・いか?」



「ゆ・・・・・!」



「ゆいか!」




奏の呼ぶ声で私はハッと我に返った。

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