第57話

ヒロイン、キャロラインのクソなところは、そういうヴァネッサの”設定”をきちんと理解している所だ。



ヴァネッサは葛藤はあるものの、結局皇太子に強気の発言をすることをしない。取り巻きたちに突き上げられるも、皇太子にはなにも言えず、弱い立場のキャロラインばかりを攻撃してしまう。



注意するのは勿論、イジメまでしてしまうのは、ヴァネッサの弱さのせいでもあった。



確かにイジメはいけない。どんな理由があろうとも。だけど”このヒロイン”は、本来のヒロインではない。ヴァネッサのことを知り尽くし、そうするように仕向け、このイジメを楽しんでいるのだ。



私への攻撃的な態度やらなんやらで、ただのバカ…ヒドインかと思いきや、実はゲームのシナリオをきちんと歩めるように行動している、そんな強かさがある。




このヒドインは、ただのヒドインではなく、強い。



きっと私がこうして前に出て発言したとしても、彼らの根本にある考えを覆すまでには至らないだろう。それだけキャロラインはきちんと確実に坂道を登ってきたし、ヴァネッサはゆっくりと確実に、坂道を下ってしまってきている。



私がどう出ようと、ヴァネッサはキャロラインにイジメをしてしまった。テディーが婚約者になって、ラビットから開放された。そんな状況に浮かれて、ヴァネッサを救えなかった。



…私の、落ち度だ。



だから悪あがきだとしても、私はヴァネッサの味方だと示したい。私の言葉がこの人たちに響かないとしても、言いたいことは言いたかった。



涙が滲む。だけど、それ以上に今、悲しんでいるのはヴァネッサだ。

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