第53話

「私とあなたの話はまたいつか。今はヴァネッサ様という存在の尊さについてお話しなければなりませんの。黙っていていただけます?」



「っっ。うぐっ。」



言葉だけでは、ラビットは止まらず。また口を開きかけたので、口を塞いでやった。魔法で。むぐむぐ言っているラビットの口と口を縫い合わせて・・・・・・、カチュアに向き直る。



感情のない目でこちらを見ているカチュア。それを見て最近はラビットがこのような表情をしなくなっていたのを思い出す。最近は無表情なんてどこかに置いてきたのか、すがるような目をされることが多かったように思う。今もなにかを必死に話そうとむぐむぐ言っているし、婚約を解消してからの方が人間らしい彼を見ているこの状況に、少しだけ笑いそうになった。



それにしても、賢しらにものを語るこの男が一番キモい。私はカチュアというキャラが嫌いだ。宰相の息子らしく、知略と腹黒さで人気を博すけれど、彼のヴァネッサへの所業は陰湿でしつこく、好きになれなかった。



しかも、彼のルートでのヴァネッサは火炙りで死んでしまう。処刑エンドも勿論しんどいというのに、カチュアはヴァネッサを生きたまま火炙りにしてしまうのだ。ヒロイン側から見れば、ヴァネッサのイジメは苛烈であり、悪役ざまぁ感覚で見れるのかもしれないが。




ただのイジメで火炙りなんて、どの世界の歴史上でも存在しないほどの残虐性があるのではないか?



結局こうなったのは自業自得感を頑張って運営が出そうとしていたが、ヴァネッサへの所業は一部ユーザーからは残酷すぎると批判を受けるほどの胸糞要素だったのは否めなかった。

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