ヒドインなのに、つおい。

第48話

なんとか止めようとするも、ヴァネッサをはじめ取り巻きの女性たちが自分の婚約者の愚行に泣き寝入りをすることはなかった。



勿論、各家からは婚約者の家への抗議文が殺到し、王命としてキャロラインを見守っているだけだと主張する本人たちと婚約者を大切にしろと叱る両親とのすれ違いは、平行線のまま学園での空気に飛び火する。



学園はピリピリムード。その中、キャロライン率いるハーレム軍団と我が婚約者、テディーだけがほわほわした雰囲気を纏って空気を読まないという、残念現象が起こっていた。



「アシュ。今日yちでお茶を飲んでいかないかい?」


「ちょっと黙ってて貰えます?」



中庭を見下ろせる、誰もいない教室で中庭を見る私の返答に、テディーがなにかリアクションを取ったのを背中で感じた。肩に手が置かれ、耳元近くにテディーの雰囲気を感じて、ゾワリと耳元に鳥肌が立つ。きっと私の耳は真っ赤だ。



「ごめんごめん。あいつらがどうなろうがどうでもいいけれど、アシュが気にするのなら気が済むまでかまってあげればいい。」


ううう、偉そうなのにかっこいい。



口には出さずとも睨んだ私の表情から察したのだろう。中庭から射し込む光を浴びてサラサラの髪どころか全身をキラキラさせている私の婚約者は、幸せそうに微笑んだ。



おおう、眼福!と頭の中で叫んでしまうほどには、射し込む光の中で見える笑顔は素晴らしい。後光、とはこういうことよね。顔が良いって素晴らしい!



「うぐぐっ、そんな顔しても今は無理です!忙しいんですから。」


「ふふ、分かってるよ。」



ヴァネッサの動向を把握するのが今の私の第一の課題。彼女の最悪な結末を無かったことにするには、素敵な婚約者ができたって、イチャイチャしてる場合じゃない。そう思いながらも、愛おしそうに頭に頬をスリスリされると、ほわほわしたなにかが私の全身を包む。ああ、このまま温かいこれに浸っていたいな。目を伏せようとしたちょうどその時、中庭でヴァネッサがキャロラインの頬を叩くのを見てしまった。



「やばい!」


「アシュ?」



テディーの声を尻目に、一目散に走り出す。淑女がどうのとか今は関係ない。とにかく私の精一杯の力で中庭に到達した。

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