第44話
「その息子がね?なんと恋をしたと言う。初めは疑ったよ。お相手の女性は才女らしいし、息子と同じ全属性持ちだ。優秀で美しいものが好きな息子の
「……。」
全属性持ちで才女。どこかで聞いたことのあるような言葉に、背中を冷たい汗が伝う。
「それにその子にはもう婚約者がいるという。確かに政略結婚同士ならば家同士の話し合いで婚約者などいくらでも挿げ替えが利くけどね。うちは公爵家だ。格下の家の婚約者を権力で奪うというのはちょっと、考えるものがあってね。例え最近、相手の令息が学園で平民上がりの女に入れあげているという噂が立っていようと、婚約解消してすぐうちと婚約を結べば、お相手の女性が悪く言われることは必須だからね。貴族ってなんでこんなにめんどくさいんだろうねぇ?人の妬み嫉みって怖いよねぇ?だって男の方が悪いのに、新しい相手が誰もが羨む高位貴族だっただけで、男を引き止められなかった女性が悪いって変換されちゃうんだから。」
ニコリと笑う彼の目は笑っていない。国を守る騎士の頂点にいる俺でも、彼のその目を見ただけで体が思うように動いてくれなかった。スラスラ綴られたことは、うちの息子と婚約者であるアシュリー嬢のことで間違いないだろう。元々仲は悪くも良くもなかったが、学園に入る時の成績の件でうちのバカ息子が勝手に劣等感を抱いているとの報告は受けていた。
アシュリー嬢は才女で、子爵家の出にもかかわらず、高位貴族が当たり前のSクラスに入学した。それは、特殊な環境で勉強に身を置いてきた選ばれし者しか入れないクラスで、例外はほぼない。頭が良い、だけならばAクラスになるはず。しかしアシュリー嬢はそれでもSクラスに入れた。ということは、試験で彼女の常人ではない才能が試験官の目に留まったということ。もう1人、平民上がりの男爵令嬢もSクラスに入学しているが、彼女は属性判定をする前に偶然の出来事から、とてもめずらしい聖属性を持っていることが判明したことから、彼女を聖女と崇める教会の後押しもあって入れたという、例外中の例外。
ただの実力でSクラスにいるということ。それが、アシュリー嬢が非凡であることを表していた。
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