第43話

SIDE トマス・カラトラバ(ドラグーン皇国騎士団長・カラトラバ伯爵家当主)



ある日、クリストファー・マーシャルの使いが面会の申し込みを運んできた。なんと本人直々に我が家に来たいという。内容は伏せられていたが、宮中でよく会う知らない仲ではない者の申し込み。しかも格上がこちらの家にまで来てくれるという。一度うちから行くわけには?と返事待ちの従者に言ってみたが、では宮中の彼の私室でとのことなので、にべもなく頷いた。



「やぁ。突然申し訳ない。ちょっとお願いがあってね。」


「はぁ。閣下がお願いとは、珍しいですな。」



握手を交わして互いにソファーに腰掛ければ、公爵家の侍女が一切の乱れもない所作で紅茶を用意する。目の前に並べられた菓子は甘すぎないものが多く、自分の好みに合わせたこの気遣いに相変わらず驚かされる。


私はこの国の騎士団長ではあるが、この方はもっと地位が上。家格は勿論、本来ならこんな軽口を言い合える立場でもない。しかしこの方はそれを許すきやすさを私に示してくれる。格上の方だと分かってはいても、親しくしたい人である。



「僕はせっかちな方でね。すぐに本題に入らせてもらうよ。実は、うちの息子が恋をしてね。」


「…はっ?」




突然の言葉に言葉が乱れる。申し訳なくなり謝るが、公爵はいつもの笑みを崩さず首を横に振った。



「なんだろう。僕ってこうじゃないか?妻も少々ふわふわしているし、息子もきっとそうなんだろうなと思っていたんだ。それなのに、あれ・・だろう?なぜ家に魔王が生まれたんだ?なんて、よく妻とも話していたんだよ。」



クスクス笑ってはいるが、この公爵夫妻は見た目はフワフワしているが中身は魔王・魔女といってもおかしくはない。貴族らしく容赦ない所は容赦がないし、属性も3属性持ち同士で魔法の面でも恐れられている。しかも、ご子息は全属性持ち。存在自体が不敬ではあるが王族すらも凌駕する恐ろしい存在だ。




彼の息子のことは生まれた時から知っている。雰囲気こそ両親に似なかったにしても、中身は立派なマーシャル公爵家の人間であることは間違いない。

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