第42話
婚約解消というなかなかに大事な案件を前にしても、カラトラバ様は笑顔を崩さず、少々軽いノリで話している。彼が連れていた従者に合図をすれば、婚約解消届けが卓上に置かれた。そこには両家円満で婚約解消ですよー。どちらにも齟齬はなく、事業もこれからも一緒にやっていきましょうねーっと、難しい文言で書かれている。
その書類には、カラトラバ親子のサイン。そして私達親子がサインする場所があり、私達が記入するだけとなっていた。
「どう申せばよいか。…申し訳ない。」
「いや、別に互いに悪いことをしたわけでもないだろう?婚約解消という暗い話題ではあるが、円満解消であるし、世間的にも醜聞として映らないように取り計らっていただいている。我が家がこれに否やを申すことはない。だから謝って戴かなくても結構だ。」
「…はぁ。」
カラトラバ様が言うことは間違ってはいない。だけど、なぜか見初められて私がテディーと婚約を結ぶことにならなければ、こういった事態に発展することはないわけで。なんだろう、浮気をしていないのに、浮気をした気がする、というか。
それに、カラトラバ様の隣に座るテディーの様子を見ていれば、言葉通りに受け止めてそうですよねー、じゃあお互いお幸せにー!とは言いにくい。
左目にくっきり殴られたような青タン。口端も切れていて、まさにボコボコ状態。態度も終始不貞腐れているラビットを見れば、カラトラバ家が全面的に快く受け入れてますよーと言われても信じられないのも仕方がないだろう。
私の視線に気がついたのか、カラトラバ様が笑顔のままラビットを見る。
「申し訳ない。
…快くと言われると少々複雑なんですけど。曖昧に笑う。
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