第37話

「ねぇ、私、なんかした?」


「お嬢様は少々お転婆ではありますが、普通の女性だと思いますが。驚きましたね。全属性とは。」


「…ああ、そのことね。確かにそうよね。」



ほぼ告白とも取れるテディー・マーシャルの発言のせいで、自分が全属性という事実すら忘れていた私は、少々顔が熱くなることを感じながらも、馬車の外を眺めた。



「…先程の告白まがいの発言は、多分ただのお戯れかと。流石に身分的にも無理がありますし。」


「…そうよね!そう、そうよね!私はしがない子爵令嬢だもの!」


「流石にしがないなどと言われては、旦那様がお悲しみになりますからお控えください。」



苦笑いのアイクの話を全然聞いていない私は大きく頷いた。そう、そうよね!私はしがない貧乏子爵家の娘。栄光ある公爵家嫡男様のところに嫁ぐなんて天地がひっくり返ってもありえない!実は問題ないとは言えないが嫁ぐことは法的にはできる。



ただ、公爵家の跡継ぎの嫁が低位貴族の子爵家の娘だと侮られるだけで。それも実は、私が世にも珍しい全属性持ちなら十分実現は可能なのだけど。



実際、男爵家の令嬢であるキャロラインが皇太子妃になれるのも、彼女が珍しい聖属性持ちな上、彼と結ばれることで更に珍しい水属性覚醒による複数属性持ちになるから。



しかもハーレムエンドで皇太子妃になり宰相のカチュア、商家のラミト、近衛団長のラビット、諜報のグレゴリーすべてに愛され囲まれる彼女は、この世界で最強とされている全属性持ちだから成立する。


それだけ全属性持ちとはこの世界で珍しいのだ。




だけどそれでも、私はモブ。ファンディスク限定の人とはいえ、彼は攻略対象者だ。流石に今回は自分と同じ全属性持ちを前にして興奮した結果の冗談だろうと私は片付けた。


(凄いタイプだけど、流石にそんな夢は見ないわ。)


それこそが馬鹿な妄想だと気づかずに。

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