第35話

(誰これ。こんなキャラ、知らない。)



スチルの片隅ですら見たことがない”キャラ"。だけど、神々しいほどの容姿、震えが出るような美声、そして、このゲーム最大スペックの全属性。それをすべて併せ持つ存在。皇太子すら凌駕するこの人物が、攻略対象者じゃないなんて、ありえるんだろうか?


そんな呆然とする私の耳に、かすかに聞こえた…。


「ファンディスク限定キャラの、テディー・マーシャル!やった!」


キャロラインのそんな、はしゃぐような声。


ファンディスク?そんなのやってない。確かにハマってはいたけど、ファンディスクは確かコンビニ限定でしか買えない、先着500名のみに売り出された限定版。本来のゲームディスクもついて3万円もしたから、流石に手に入れれなかった。


もともとのゲームも付いてるならそのゲーム分引いて出してくれてもちょっと3万円は無理。こんな底辺ゲームのくせにちょっとやる気出しすぎでは?なんて馬鹿にした記憶すらある。



結果は初日で完売。誰もが知るゲームではないにしろ、声優の独占インタビューとかのDVDもつけていたからか、声優推しさんたちが買い占めたみたいだった。


そんなもんいらないもんね、と思いながら、コンビニの専用機械で調べて、即完売になっている画面を見てがっかりした覚えがある。その時の私は流石にゲームに3万円も出せるわけではなかったにも関わらず、だ。



それに確かに、ファンディスクと呼ばれる追加の攻略対象者が出てくる本編スピンオフが存在した。だけどそれに出てくるのが誰かまでは、結局手に入れられないのに調べても腹が立つと、調べなかったのがいけなかった、のか?



きょ、強烈なんですけど。あまりの美形に目が焼けそう。しかも腹がたつことに、ものっすごいタイプ。生前の自分の理想を具現化したような存在が目の前で水晶玉を虹色に輝かせていた。

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