第31話

正直、冗談ではない。考えてみたら、リーダーが動くのは普通、みたいなこの風潮、この世界でも前世でも一緒だなと思う。



女子の集団とは常々こうなってしまうのか。



【貴女が普段私達のリーダーやってんだから、言いにくいことを言うのは当たり前よね?】



これである。



結果、ゲームでは彼女たちに後押しされて、ヴァネッサがこの場で直接、皇太子に苦言を弄す。それに笑顔ながらも明らかにムッとした雰囲気の皇太子。取り巻きたちは常々ヴァネッサをよく思ってないので、嫌悪感を顕にする。



そんな中、ヒロインが言うのだ。



「まぁまぁ、そんなかたっ苦しいこと言っていると疲れちゃいますよ?」



そして、このあとは。



「すとーっぷ!」


「っっ、貴女!」


「…あ、アシュリーさん。」




ヴァネッサ様の真っ白な白百合のような手がキャロラインの頬を張る寸前、なんとか間に入る。トリップしている内にサクサクとシナリオが進むもんだからびっくりしたよ。本来なら、ここでヴァネッサが物申すのを止めるべきだったけど、取り巻きたちの後押しからのヴァネッサの実行力が早すぎて、流石に無理だった。



「申し訳ないのだけど。私は貴女のクラスメイトではあるけれど、名前を呼ぶ許しは出した覚えはないの。きちんと家名で呼んでくれないかしら?」


「で、でもぉ、それって寂しいじゃないですかぁ。」


「貴女の寂しさは正直どうでもいいの。あまり親しくもない人をきちんと家名で呼ぶのは、貴族だけでなく、平民の方でも当たり前にできることだわ。」




私の反論に、目をうるうるさせていたヒロインの顔が歪む。こわ。ヒドイン、ちょっと出てるからちゃんと取り繕わなくちゃだめだぞ!

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