第26話

私はヴァネッサの幸福のため、なにより自分が幸せになるために、計画を練った。正直、ちょっとこれはもはや悪人では?なんて卑怯な手を使う方法すら思いついたほどである。


だけど!だけど!



「ヴァネッサ様!あちらでお花を鑑賞いたしませんか?勿論その辺に咲いてる花なんて、最高に美しいヴァネッサ様という花には敵いませんけど!」


「あ、あなた、何を言っていらっしゃるの?花なんて見に行きませんわ!」


「かわっ、可愛い!照れてるヴァネッサ様は最高に美しいんだから、花なんて見に行きませんよねー!」


「ううっ、トミー!この子相変わらず話が通じないわ!」


「ヴァネッサ様お気を確かに!今どけますので!うぐっ、なぜこんなに動かないんだ!」




本物ヴァネッサの存在の衝撃ったら!トミーにグイグイ手を引かれているけど、さり気なく強化魔法を体にかけて動かないようにする。これも、ヴァネッサを救う計画の一部。家の図書室にあった大体の魔法全集は読んだ。とりあえず使えそうな魔法はある程度取得して、最悪皇太子を敵と想定した時に役にたちそうな呪文もピックアップして習得済み。その魔法の一部がこんな所で役に立つとは、誰が考えただろう?



ああでも!この素敵な甘い香りをいつまでも嗅いでいられるんなら、頑張ったかいがあった!クンクンクン!ふはぁ!



「ちょ、ちょっと、嗅がないでちょうだいまし!」


「お前!うちのお嬢様に懸想した上そのような破廉恥なことまで!流石に許されんぞ!」


「……あ?」




トミーのバカが謎の発言。ちょっとそれは聞き捨てならない。キッと睨めば、トミーが頬を引きつらせてその場に凍りつく。なに、その間抜け顔?

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