第25話

「ヴァネッサ様ー!おはようございますぅ!」


「…おはよう。いつも言っているように、きみが悪いから近づかないでちょうだい。」


「おふっ。かわっ、可愛いー!」


「かわっ!ねぇ、わたくし、自分でも酷い物言いをしたと思うのだけれど?」


「は!ヴァネッサ様は間違っておりません!この者の頭がおかしいのです。」


「は?トミーさんは黙ってて貰えます?それに!ヴァネッサ様に近づかないでください!距離が近いと思います!」


「な!私は従者としてヴァネッサ様と適切な距離を保っています!そんなケイス嬢こそ!爵位が下のくせに無礼にもヴァネッサ様に抱きつくなど!恥を知りなさい!」


「良い匂いのする花に蝶が留まるのは当たり前のことなんですけど!」


「な、なんという、はしたない…。」


「……はぁ。」




最近の朝の定番の光景。ヴァネッサの従者のトミー。彼は実は、ヴァネッサに当たりが強いこのゲームで、数少ない味方の1人だ。


後ろで無表情で控える女性、アミと、その横で飽きれたようにこちらを見てくる体格の良い男性、マイケル。トミーを含めたこの3人は、どのシナリオでもヴァネッサを救おうと奮闘する。



しかし彼らはヴァネッサよりもひどく、全シナリオで非業の死を遂げるのだ。


でもその全てがヴァネッサへの強い忠誠を示していて、私は彼らが大好きだ。


私とヴァネッサ様の愛を邪魔しなければ、だけど。

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