第24話

ヴァネッサの視線がチラリとヒロインを見て私を見る。その目はゴミを見るような蔑んだもので、私の心臓は嬉しさでギュンギュン締め付けられた。


「もうすぐお時間ですわよ。お席にご案内した方がよろしいんじゃなくて?」



ヴァネッサがギロリとカチュアを見る。苦虫を噛み潰したような顔を一瞬したカチュアは、その表情をすぐに無表情に変えて、「申し訳ございません。」と頭を下げた。



ヴァネッサがいるだけで、雰囲気がピリつく。グレゴリーはこれ幸いと、さっさと自分のクラスへ行ってしまった。つばを飲み込んでしまうような重苦しい雰囲気の中、ヒロインが一歩前に出た。



「あのっ!」

「無礼にも、突然名乗ることをお許しください!わたくし、ケイス子爵家のアシュリーと申します。ヴァネッサ様!お慕いしております!」


「………は?」



ヒロインのこれからのセリフなんてどうでもいいのだ。どうせ、私がミカエル殿下たちを引き止めてしまったのです!だから、責めるなら私を責めてください!なんてあざといセリフが出てくるだけだし。


それよりも、今は私の気持ちをヴァネッサに伝えることの方が大事!



何言ってんのこの羽虫?という蔑みの視線と、流石に驚いたのか、淑女に、あるまじき、は?発言。動揺している!私のヴァネッサ様が!動揺している!



きゃ、きゃわわわわー!



つい、と近寄れば、ヴァネッサがその近さに目を見開く。そして、告げた。



「ヴァネッサ様!お友達から、お願いしますぅ!」



そういう・・・・つもりはないのに、そう聞こえちゃう言い回しをしてしまっていることに気づかない私は、なぜか頬を染めるヴァネッサに更に興奮してしまう。そのせいで気付なかった。鋭い視線で私を射抜く、ヒロインのそれに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る