第22話

途端、教室内が静まり返る。そして…。



「ふはっ、君は面白いな。」


「殿下!」


「まぁまぁ。この髪色と瞳、そしてここにいるということはこの子は陛下の言っていた特待生の男爵令嬢ではないかな?」


「まさかっ、こんなバ、いえ、このような奇妙な娘がですか?」



カチュアが明らかに馬鹿と言いそうになって、ヒロインが頬を膨らませるところまで、ゲームと同じ。しかも、リアクションを取ってないのにまるでそこにいるのが当たり前みたいに自分が巻き込まれていることに、恐ろしさを感じた。



「私は珍しい魔法が使えるみたいで。だけど、ちゃんとこの学園に通わせてくれたお父様の為に恥じないよう、努力したつもりです!」


「あ、ああ。すまない。」



胸に手を当て詰め寄るヒロインの近さに、カチュアがやや頬を赤らめて後退る。その様子を見たヒロインは彼が反省してくれているのだと勘違いして、満面の笑みを浮かべるのだ。



「ああ良かった。ご理解いただき、ありがとうございます!」



元気のある声とは裏腹に、キャロラインは最近習得したばかりのぎこちないカーテシーをする。それに、優しげに目を細める皇太子も、頬をさらに赤らめるカチュアも、探るような目から一転、目を見開いたグレゴリーも、この場でヒロインにトゥクン…と胸を高鳴らせるのだ。




そしてそれを見ているだけのモブ、アシュリーこと私は。


(キョウセイリョク、コワイ。)


白目を向いてガクブルしていた。

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