第21話
パッと聞いたら知らない声優でも、検索してみたら結構SNSで話題に上がっていたり、村人Aの役だとしても、誰もが知る有名アニメに出演していたり。そういう原石たちが声優をしていたから、結構原石推しの子たちがプレイしていたらしい。
私は声優は興味がなかったけど、なにげに贅沢にフルボイスだったりしたから、折角だから楽しもうと、声をオフにはせず、たっぷり耳元(イヤホン)で聞いたので、こいつらの声は嫌というほど知っていた。
いやいや、ここはゲームの世界であってゲームの世界じゃないのに。ちゃんと声は声優のだなんて、なんだか混乱する。
見れば振り返ったヒロイン越しに、あっと驚くメンバーが見える。
「先程は転んだりして、大丈夫だったかい?」
何度転んでんだこの女?という私の脳内再生とともに甘い声を響かせるのはこの国の皇太子、ミカエル・ドラグーン。こいつルートはヴァネッサが処刑されてしまうので、1番避けたい人物でもある。
「淑女があんなに走るものではありませんよ?そのような者がSクラスなど。この学園の風紀は一体どうなってしまったのやら。」
同じく、ヒロインちゃんうっかり転んじゃったイベントを体験したらしいのは、皇太子の取り巻きで宰相の息子であるカチュア・スイム。こいつは理論詰めの皮肉屋なのに、デレた時の破壊力がものすごいことから、結構人気があった奴。いつも皇太子と一緒にいるから、ヒロインちゃんとの出会いイベントに居合わせたんだろう。
そして、その隣で皇太子の甘い笑みとは対照的な妖艶な笑みを見せているのは、魔術師団長の息子、グレゴリー・ワイルド。同じ場面に遭遇したはずなのに、ヒロインに話しかけず、不躾にならない程度に様子を伺っている様子は、ゲームの設定通り、女好きと称して女を信用していない、女嫌いキャラのようだ。女遊びをしていそうで実際に侍らしているのに、実はその誰とも関係を持っていなかったという、なかなか複雑なキャラである。
ある意味一途とも取れるので、派手な見た目が好きで一途な男を求めているわがまま女子には一定の人気があった。
す、と私は一歩前に出る。ふんわりと軽く、カーテシーをした。
「皇太子殿下におかれましてはご機嫌麗しゅう存じます。」
「ふえ?」
「…ああ、ここは学園だからね。誰もが平等だ。そのような挨拶は不要だよ。」
「…恐れ入ります。」
そんなわけにいくかボケ。と暴言を脳内再生させながら、散々練習したカーテシーを解除して視線を下げた。おいヒロイン、ふえ?じゃねえよ!設定まんまだな!挨拶くらいしろよ!
『皇太子殿下の前ですよ。ご挨拶しなくては!』
ゲームではアシュリーが小声でたしなめる。だけど私はそれを意図してやらない。それなのに。
「あ、皇太子殿下であらせられまする?私はキャロライン・ラングレー。キャロって呼んでくださいね!」
その”続き”を、彼女はヒロインスマイルに乗せて言った。
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