第20話

「あっ、同じクラスだったんですね!先程は失礼しました!」



来たな。と心の中で吐き捨てて笑顔で振り返る。予想通り、満面のヒロインスマイルでこちらを見ているのはキャロライン。



「あ、貴方は先程の?」



油断しているうちに、まるでそれが当たり前かのように、ゲームのセリフが口をついてゾッとした。


こうして私は、”ちょっと”思い込みの激しいヒロインの親友に成り下がるんだわ…。



「あ、覚えててくれてたんですか?嬉しい!これから同じクラスで3年間、よろしくお願いしますね!」



両手を胸の前でパンッと合わせて、ヒロインはそんなことを言う。この学園は基本クラス替えはない。だけど、成績次第では誰かがSに上がったり誰かがAに下がったりはあり得る。だけど、ヒロインは持ち前のポジティブさで、目の前の初めて会った女生徒が3年間同じクラスだと信じて疑わない。



「よ、よろしくぅ。」




ドン引きするあまり、貴族の仮面が外れたけど、それは少々許してほしい。仲良くしたくない!エエ子やけども!仲良くしたくないんやー!と、なぜか大阪弁で絶叫する脳内を必死に抑え込み、淑女スマイルでなんとか乗り切ろうとしていた私を前に、【物語】は進んでいく。



「あ、君は、さっきの?」


「…ああ、先程の。」




更にギクリとさせる声が。このゲーム、少々低予算のゲームらしく、声優はそこまで有名な人は使っていなかった。だけど、制作陣がにくいのは、これから人気が出てくるような、いわゆる原石を集めていたこと。超有名声優だったら、みんなが知っていてもおかしくないけど、一部の子たちはこれから磨き上げられる原石推しだった。

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