第15話
「行こう。」
「っっ、ええ。」
無表情で手を引かれ、少しの痛さを感じながら馬車を降りる。脳筋の設定らしく、ラビットは女性のエスコートが苦手だ。馬車から下ろすだけで痛みを感じるほどの強さで引っ張るとか、高位貴族の子息としては失格である。しかし、それは不器用が故。将来を騎士団長として過ごしたい彼は表情を読み取られにくいように努めて無表情を装っているが、内心エスコートに間違いがないようにと力んでいるだけなのだ。
そしてそれを…。
「あっ、痛っ!」
「っっ、大丈夫か?」
”無邪気に”指摘するのは、ヒロインであるキャロラインだ。
「あ、ありがとうございます!っっ、痛っ!」
「す、すまない、痛かっただろうか?」
「ふふ、平気です!でも、私だったから良かったものの、か弱い女性をそんなに強い力で引っ張るものではないですよ?」
「…それは申し訳なかった。」
初めの出会いは、転んだヒロインをラビットが助けるところから。そして、冗談交じりではあるが、ラビットの失態を堂々と指摘するキャロラインに、ラビットはちょっとムッとしてしまう。
『なんだ、この無礼な女は?』
笑顔で人差し指をピンと立てて言うヒロインを前に、ご自慢の無表情を歪めているラビット、それをキョトン顔で見ているアシュリーが映るスチルを背景に、ラビットは今、こんなセリフを頭の中で吐いているだろう。
そして後日、再開した時、あ、あの時の無礼な女!となるのだ。
時系列としては確か3番目。ヒロインが攻略対象者の1人、ラビット・カラトラバとの出会いを果たす、大事なイベントが目の前で繰り広げられた瞬間だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます