第15話

「行こう。」


「っっ、ええ。」



無表情で手を引かれ、少しの痛さを感じながら馬車を降りる。脳筋の設定らしく、ラビットは女性のエスコートが苦手だ。馬車から下ろすだけで痛みを感じるほどの強さで引っ張るとか、高位貴族の子息としては失格である。しかし、それは不器用が故。将来を騎士団長として過ごしたい彼は表情を読み取られにくいように努めて無表情を装っているが、内心エスコートに間違いがないようにと力んでいるだけなのだ。



そしてそれを…。


「あっ、痛っ!」


「っっ、大丈夫か?」



”無邪気に”指摘するのは、ヒロインであるキャロラインだ。



「あ、ありがとうございます!っっ、痛っ!」


「す、すまない、痛かっただろうか?」


「ふふ、平気です!でも、私だったから良かったものの、か弱い女性をそんなに強い力で引っ張るものではないですよ?」


「…それは申し訳なかった。」



初めの出会いは、転んだヒロインをラビットが助けるところから。そして、冗談交じりではあるが、ラビットの失態を堂々と指摘するキャロラインに、ラビットはちょっとムッとしてしまう。



『なんだ、この無礼な女は?』



笑顔で人差し指をピンと立てて言うヒロインを前に、ご自慢の無表情を歪めているラビット、それをキョトン顔で見ているアシュリーが映るスチルを背景に、ラビットは今、こんなセリフを頭の中で吐いているだろう。



そして後日、再開した時、あ、あの時の無礼な女!となるのだ。




時系列としては確か3番目。ヒロインが攻略対象者の1人、ラビット・カラトラバとの出会いを果たす、大事なイベントが目の前で繰り広げられた瞬間だった。

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